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夕映えの道

昨年のノーベル文学賞受賞作家である、ドリス・レッシングの作品を読みました。タイトルは「夕映えの道」(The Diary of a Good Neighbour)。久々の純文学作品の読破です。

ノーベル賞受賞にしては日本であまり知られていない方ですが、10作品程度は日本語訳が出ています。もともとは池袋のLibroでドリスの本が平積みになっていたのを手にとって、あぁ、この方がノーベル文学賞だったんだな、と思い、中にアフリカを舞台にした作品が少なからずあったことが印象に残ったのがきっかけです。

子供の頃、タンザニアのダルエスサラームという町を舞台にした、もうタイトルも忘れてしまった小説を読み、アフリカへの一種の憧憬を感じる部分が自分の中にあり続けているのですが、そこが刺激されたのですね。ドリスの場合はジンバブエですが。

そして、図書館でこの本を見つけたとき、舞台はアフリカではなくイギリスですが、ちょっと読んだところ、とても特徴的な文体で(翻訳の方のご苦労が伝わってきます)、不思議に心に残る文章だったこと、そして主人公が自分より少し上のまだ老いを感じるには早い年齢の働き盛りの女性だったこと、90歳を超える老女モーディとの出会いから、これまで目を背けてきた死や老いに近づき、理解はできないまでも理解しようとしはじめる過程が、自分が身近に迫っているにもかかわらず、まだ目を背けているものそのものにあたっていたことが興味を惹きました。

登場人物はほとんどが女性です。ですから、もしかしたら女性の方が共感をさらに得られるのかもしれません。ですが私が読んでも、主人公の心の変化がすごく身近なものに感じられ、着実に読み通せました。日記の形はとっていますが、時系列が老女の過去、主人公自身の過去、同僚の過去と、それぞれの人生を軸にして自在に飛びかい、この作品の内部空間がぐっと押し広げられるような力を感じさせます。

そして、数少ない登場人物の、それぞれの心の動きが象徴的で、きっと自分がこの先辿りそうな予感さえ伺わせて驚きます。

1970年代のイギリス、ロンドンを舞台にしていて、町への愛着が土台にあるのですが、私にはその退廃的な様子から、どうしてもニューヨークの情景が浮かんでしまいました。むしろ、こういうイギリスで、1970年代の数々の音楽が生まれてきたのだと思うことの方が不思議で、全くかけはなれたところで、こうした町の様子なんてお構いなしに音楽があったのか、それともこうした事実を隠すために音楽がシンフォニックに美しく輝いたのか、なんていうことも、考えてみると面白く感じられるのでした。

ドリスの作品は今も新潮文庫で1冊出ていますし、図書館では蔵書に含まれていても借り手がそうおらず、割と身近に手に入るはずです。ノーベル文学賞作家の作品に触れてみる、という気持ちでいかがでしょうか?
2008年06月23日 | Comments(0) | Trackback(0) | 遠い音楽日記
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